自動車の世界で働くことになった、すべての若いきみたちへ
古賀章成です。自動車開発テストドライバーという仕事をしています。自動車メーカーで8年、エンジニアでありながらテストドライバーとしての訓練も受けつつ、ラッキーなことに2015年には新入社員の研修係として1年、通常業務と並行して、新しく入ってきたフレッシュな人々と、いろんな悩みやこれからの展望について、その会社で、いや、これから自動車業界を取り巻く環境や、自動車が人類や世界に対してできることについて議論をたくさんしました。
GWが終わり、配属先が決まって新天地で業務がスタートしたり、各種「研修」にぶち込まれて、「こんなはずでは!!!こんなことをしている場合では!!!」と、思ってる頃かなと思います。
まぁ、やってみてください。無理なものは無理と、現場のリーダーにちゃんと相談してください。いけると思ったらやらせられるだろうし、無理だと判断したら次の何かを用意されます。過度に理不尽に思うことなく、また過度にやる気を落とすことなく、自分の力量と 自動車の生産、物流、販売、の現場で、「自分がこれを買う人の人生を変えちゃうかもな。しかもこれ、すげー遠くに出荷されるんだろうな、」とか思いながら、やってみてくださいぼくはね、工場で中夜勤で働いた9ヶ月は、人生の宝だと思っています。そこで身につけた所作は、どのメーカー、どの工場、どんな部品メーカーさんや倉庫に行っても、「さすがですね、一流ですね」って言ってもらえるから。
さて、この頃には薄々次のことがわかっていました。自動車業界に入ってくるフレッシュマンの、おおよそ半分はペーパードライバー(これは日本の造語らしいんですけど、免許というペーパーは取得しているけれど、実際には運転する機会を逃し続けて、わざわざ運転する理由も特に見失って5年から10年経ってしまってもう改めてやるのもなぁ、という気持ちになっている人たちのことを指します。)個人的には、わからんでもないというか、まぁ自社の製品のことを知りたい人は始めてみればいいんじゃないのと思っていて、そういう機会を身近なところから(例えば寮の後輩とかね)ドライブに連れて行ったり、広い私有地でちょっと運転させてあげたり、みたいなことをやっていたのですが、いわゆる当時でいう「上司や幹部社員」世代にして40歳後半から60歳手前の人たちの感覚では、
「自動車に携わろうという人間が、運転もまともにできないとは何事か!!」
みたいなことを言うんですよ。
ぼくは北海道で狂ったようにロードスターを走らせていたのでまぁ自分なりにクルマに対する思いはあったけど、いや、現代の多くの大学生にとって、無理ですって。なんでその無理がわからないのかと。例えばですけど、私は大学で工学部の応用理工・応用物理という学問を専攻していて、クルマよりもむしろ、計算機科学とか、半導体を活用するメーカー、つまり、NTTデータとかPanasonicとかSONYとかに就職する可能性があったんですが、サーバーは研究室にあったから少しはわかったけどOSが違ったらまるで話は違うし、Panasonicでドライヤーの担当になったらぼくドライヤーに興味まるでないし、SONYはやる気出したかもしれないけど一眼レフガチ勢とかが勢揃いしている中に放り込まれても、αもいいけどRXでよくないですが…みたいな話になるわけで、その業界の全てを知った上でキャリアをスタートする必要があるかというと、
ないです。ないと思うけど、どれだけ効率よく良質な成長をしていくか、
がポイントです。今はYouTubeでいろんな人がいろんなことを言ってて、それはそれで多様性があっていい(昔は重鎮やスターが褒めたら何でも良い、となっていたのでそれはそれでブーム作りには良かったかもだけど)。これから先、ブームというのは生まれにくくなる。あらゆる人生観にマッチする商品やサービスの展開が重要になってきて、
今の日本車は限りなくそれが出来ている。近年稀に見る豊作の年だと思っています。
あなたは、人生の中でどんな瞬間が嬉しいですか? 誰かとどこかへいく時?大切な人(恋人や家族だ)けで過ごす時? 1人で誰にも邪魔されずに静かな場所まで走っていくのが好き? でっかいクルマに友達大勢連れて? 毎日のお買い物やお子様の送迎のほんの束の間??本当に、人生の数だけカーライフがある。
てことは、クルマの機能について詳しくてもあんまり意味がないんです。意味がないは言い過ぎだけど、それは大前提。また、超絶技巧で自分が運転上手すぎてそれだけでもダメ。その体験を再現する或いは言葉で説明できないと、ワクワクしてもらえないから。
この記事で言いたかったのは、
これからやればいい、難しかったらぼくに連絡してくれたらプライベートでも会社通してでも(出張もOK)勉強会できるから連絡くださいね。
いまクルマのことがわからないのは怠慢でも何でもない。おれもシャープに就職したとしても、ヘルシオ以外の電子レンジは名前も知らんし、ヘルシオで何ができるんかも知らん。大丈夫だ。(大乗だと思う(適当))
というわけで、 自動車関連の新入社員で路頭に迷いそうな人がいたら、遠慮なく連絡ください。現役のエンジニアも普通にお金払って何かしらテーマ決めて議論する、みたいなこともやってますから、きちんと予算相談して、必要なクルマ集められるだけ集めて、やれると思います。
いまみなさんは、2011年わたしが就職した年よりもはるかに厳しい環境下で自動車に向き合ってると思います。それは、離れた位置にいるからこそわかるものがあります。
自分にも守秘義務があるので元いた会社や他から聞いた話はできませんが、高校生の物理化学や大学の数学で説明できる範囲、そして原稿の国産車に関してはいま全車種毎日のように触ってるので(これに関しては日本一の作業量だと思ってる)ので、役に立つと思います。
あと最後に、 クルマ好き っていうキーワードにあまり振り回されなくて大丈夫です。一口にクルマ好きと言っても、本当に多種多様なので。とりあえず無視していいです。
あと、海外のクルマと、日本の軽自動車にしっかり目を向けてください。これらは対極にありながら、伝統芸能とか、古典に近いです。いつかゆっくり話しますが。
というわけで、GW終わって、赴任先や実習車きで萎えてると思うので、ちょっと先輩からの余計なお世話の話でした。
そのうち大きい広場を貸し切っていろんなクルマ用意してみんなで勉強会するつもりだから、所属とか関係なくプライベートで遊びに来てくださいね。
会えるの、楽しみにしててください。もうメーカーや世界の垣根を超えて、グローバル・オールジャンルでやるつもりで進めてるから。それでも、2CVとかルノー4とかに乗ると「これでいいなぁ」と思ってしまう現象も解き明かしたい。日本だとワゴンRのMTとか、ミラのMTね。何なんだろうね。
さあ、自動運転はしばらく来ない。0歳児は3歳児になる、その3年間を漠然とした機体の中で過ごさせるのか、一歩踏み出して自分の責任で運転できるような気持ちにさせるのかは、あなた次第。そして、子供の育成を促すことは結果として社会的に育児に貢献してるってことで、いいんじゃないかな、
とか。ぼく勝手に思ってます。
とにかく、クルマ業界でメンタルやばかったらこがさんに相談だ。HPのお問い合わせ欄にメールアドレスやTwitterやInstagramのアカウントが載ってるから、そこからDMでもください。
では!
自動車開発テストドライバー 古賀章成
akinarikoga@meetthecars
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