EV(電気自動車)だからこそやってくる未来があり、EVになったとしても揺るがないものがある。さあ新時代の自動車に触れてみよう。①【MAZDA MX-30 EV】

3日で脱ペーパードライバー

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EV(電気自動車)って、何が違うの?むずかしいの??

このBlogを読んでくれる殆どのが、いわゆるペーパードライバーと呼ばれる平たく言うと「長い間、自動車の運転に興味がなかった人たち/コンプレックスがあった人たち」だと思っています。なので、「技術的に革新的なことがどうのこうの!」とか、「いま世界的に注目度の高いエネルギー問題や環境問題を踏まえた何が云々!」などと書いたても何のこっちゃ??と、面白くないと思います。そこで今回は一足飛びに、

ペーパードライバー大集合で、EVのある生活を体験してみた!(そして、まさかの大好評だった…!!)

という話をしたいと思います。

ペーパードライバーの駐車の練習ロングトリップでの高速道路での充電・休憩

素朴な疑問としての、「EVが難しいか?」という問いに答えるとすれば、今時点での正直な感想では、「これまでの自動車と大きく変わることはないし、その必要もないんじゃないか。」という気がしています。そもそも別物のはずだと思っている先入観自体が話をややこしくしているんじゃないか、と、今時点では思っています。

この企画を実施するにあたり、マツダ株式会社様から MX-30 EV 広報車(詳細はリンク先からどうぞ。HPがかっこいいです。 をお借りました。今回も企画の趣旨にご理解をいただき、いつもありがたい限りです。

この企画を考えた当初、何しろわたしもEVには慣れておらず、いろいろ難しいことやトラブルが起こることを想像していたのですが、全くといっていいほどの杞憂に終わり、みんな「自然に」この MX-30 EV に乗れて、「運転しやすい」と言う、大成功に終わりました。わたしはこの展開を想定していなかったので、新しい発見だらけの2週間でした。

色んな人たちとこのクルマでドライブしたので、で少しバタバタした記事になりますがご容赦ください。それでは、まいります!

ペーパードライバーの練習にこそEVは活躍しそう!(MX-30 EV が持つ良さかもしれないが)

自動車運転免許を取得してからクルマに触れることなく3年も経過していれば立派なペーパードライバーでしょう。わたしだって、3年くらい英語を喋らなかったらまぁ海外の居酒屋でジョークを交えた英語での歓談をする自信はなくなります。多くの人々にとってクルマの運転もそういうことなのでしょう。わたしはそんな人たちと何人も何人も一緒にクルマの運転の練習をするんですが、今回初めて、ペーパードライバー向けの練習にEV(電気自動車)を活用してみました。

結論から言ってしまうと「教える側は教えやすいし、教わる側もわかりやすい」です。

ただ、これについてはEVがいいというべきなのか、MAZDA MX-30 EV というクルマがいいというべきなのか、表現に迷う部分があります。いまこの瞬間の気持で言うと、後者です。例えばですが、比較するのはどうなんだと言われそうですが、同じことをポルシェ・タイカンでやれって言われたら、ちょっと難しい気がするのです。ポルシェ・ケイマンだったら出来る気がします。この違いはマニアックすぎるので別に記事でやりましょう。じゃあ何がペーパードライバーのための練習にGOODなのかというと、

  1. ブレーキの操作感とコントロール性
  2. 加速のレスポンスと豊かな駆動力(最も重要とも言える要素)
  3. ミラーや目視で4輪の位置や角度が把握できる視認性

ざっくりいうとこの3つに集約されるとわたしなりに思っています。逆に?言うと、これまででのペーパードライバーのための最初の練習用のクルマ選びはピッコロカーズの店長と一緒に、様々なクルマの中から日々、検討・研究しながら選定しています。たとえば、

  • 三菱アイ
  • FIAT500
  • ルノーメガーヌGT-tune

などがペーパードライバー向けの練習のレギュラーメンバーです。

 

話を元に戻しますが、まず、MX-30 EV は、ブレーキのタッチとコントロール性が世界的に見ても極めて秀逸です。この感じは現行のMAZDA3が初採用したブレーキシステムやフィーリングを踏襲しているのだと思いますが(EV用の回生ブレーキがまた別のシステムとして入ってるとしたらなおさら凄いのでは?)、素晴らしいコントロール性だと思います。例えば初心者が、停止状態からじわじわとブレーキペダルの踏力を抜きながら、クリープ走行に移行するまでの過渡領域、ディスクブレーキであればパッドがディスクローターを掴んで離さない状態からすこーしずつその掴む”手”を緩めていって、完全に離し切るまでのその間、その間をコントロールできるようになることが”自信・安心・実感につながる第一歩”なんですが、これがうまく足の感覚と車両の動きが一致する(感覚が得られる)クルマって実は案外少ないものです。こういう領域で、私見ですが輸入車と国産車の間には大きな差がある気がしています(実際にそういう練習をしようと思ったらアイも含め欧州で走れるクルマを選んでいるのが事実でもあります)。国産車で、その標準のモデルでこういうコントロールが時速10キロメートル未満の速度域で自由自在というのは感動的でありました。クセもないから教えやすい。足をどういう感じにしたら車両がどうなるかという、言葉を介してのコミュニケーションの内容と、受講者が実際にやってみて得られる体験が極めて近いから、極めて効率よく練習が進みます。どんな習い事もいい道具で練習するのがよいのでしょう。ごく低速で安心して動き回れるようになるこは、実際のショッピングモールの駐車場などで徐行するスキルに直結するので、まずはこれが出来るようになるというのはとても大切な一生モノのスキルなのです。一度これが出来るようになれば、次にクセのある乗りづらいクルマと対峙してもなんとかして乗れるようになる、徐行できるようになる、というイメージで練習を進めていきます。

加速のレスポンス(の速さ)と、豊かな駆動力は、非常に重要です。この、加速する性能やフィーリングが、一般道を安心して走るための最も重要な性能と言って過言ではありません。ここ数年のMAZDA車は、かつての ”Zoom-Zoom” の印象は影を潜め、アクセルを踏んでも踏んでも加速してるんだかしないんだかよく分からない味付けが多かったですが、このMX-30 EV はまるで違う…!鋭くて、俊敏! たとえば、高速道路の合流・流入の時、限られた加速レーンの中で、前方を走るクルマと後方からやってくるクルマとの間にスムーズに入りたいわけですが、このときに加速しない(或いはそう感じない)クルマはどうしようもないのです。すでに上手な人たちから言わせれば、「あらかじめ加速しておけよ」とか、「全開踏めばそこそこ加速するだろ」なんて話なんですが、そんなの本人たちだって2weekもあれば気がつくんです。こういうのは最初が肝心です。「怖い!」とか「出来る気がしない!」なんて思ったらもうおしまいで、またペーパードライバーへ逆戻り。ここで、「自分の意志で力強く前へ出ることが出来る実感」が、とんでもなく大きな自信に繋がります。ターボラグや変な遅れがあってもダメ(踏み込むのを躊躇して加速が遅れる)、遥か昔のVTECみたいな超高回転型でシフトダウンしてぶん回してもダメ(怖がる)、アクセルペダルに足を乗せて力を込めた瞬間からグッと動き出す感じ(レスポンス)と、その後から湧き上がってくる確かな加速力(駆動力)が、初心者にとっての(或いは初心者と一緒に練習するぼくみたいな仕事をする人間にとっての)、いいクルマです(初心者にとっても何も、大排気量のNAエンジンが求めているフィーリングってそういうものだし、例えばBMWの直6やメルセデスのV8のNAエンジンが出す性能ってそういう性能だから、ある意味では厳しい状況でもストレスなく駆け抜けるために必要なの当然の性能なのかもしれません。)本当は、Gの収束具合(伸び感)の良さにも言及したいのですが、マニアックになるので別の記事でやります。

視界は、不思議で素晴らしいとしか今は表現できないんですが、とにかく駐車の練習がしやすい。着座位置の高さやミラーの大きさやボデー側面の形状やいろいろ要因はあると思うのですが、これまで使ってきた車両のどれよりも、誰に乗せても”まっすぐ”が出しやすい です。これはいつか開発の人たちに聴いてみたいと思っているんですが、マツダに限らずこれまで使ってきたどんなクルマよりも”まっすぐ”が出しやすいです。

 

何がキモなのか分析する時間が足らなかったのでもう一度借りたときにじっくり分析したい&作った人に話を聴いてみたいと思いますが、本当に駐車しやすいです。ペーパードライバーの人たちってなにがコンプレックスかって、駐車です。だから、条件が甘かろうが広い場所だろうが、まずは一回、きれいに枠の中に自分で運転して駐車が出来るようになるっていうだけで、そのごのモチベーションがまるで変わってきて、ひとつ、また一つとやってみようと思えるみたい。逆を言うと、どんなに上手にワインディングを走れるように鳴っても、駐車に不安がある人は未だにぼくのところに練習に来ます。それはそれでほかの色んな体験をしてきた上でのさらなる練習を踏まえてやるんだけれど、レンタカーなんかでどんなクルマが来るかわからない状態でクルマを運転するのがアタリマエの昨今では、駐車というのは慣れではなく本質的なスキルとして、自動車メーカーの運転訓練並みの厳しさで特訓しないと、「何でも乗れる」とはならないのです。心配してぼくに相談しに来る人はむしろ、クルマによる操作感や操作系の違いをよくわかってるってことです。毎度毎度、その課題意識の高さを褒めたいです。

というわけで、わたしのお客様は99%がペーパードライバー/そこから脱出してカーライフを楽しんでる人なんですが、MAZDA MX-30 EV というクルマにほとんどの人がすぐ馴染み、運転に対する自信と実力をつけていきました。予算が許すなら、MX-30 EV を、弊社のペーパードライバー向けうんてん練習サービス、MEET THE CARS #こがとうんてん の公式標準練習車として採用・導入したいくらいです。*ガソリンエンジンのモデルはまだ上記のような検証をしていないので、挙動が異なる可能性があります。記事の内容は、あくまでMX−30 EV のものとしてご理解ください。

EVって長距離はどうなの?(東京-名古屋 日帰り旅行してみた)

EVは、ガソリンスタンドでの給油ではなく、(ほとんどの場合は)別の場所で充電をします。方法は大きく2つあって、充電スタンドに出向いていって10-30分ほどの短時間で大量に充電する急速充電と、公共駐車場や自宅駐車場にで6-10時間ほどかけてゆっくり充電する普通充電があります。今後はこの充電インフラの整備がどのように進んでいくかがEV(或いはPHEVも含め)の利便性の向上とそれに伴うEV普及のカギになると思います。2weekほど実際にEVで生活してみて、まだまだ(社会的な)課題はも見えてきて、EVのあり方や普及の仕方もどう転ぶかわからないなと感じたのが本音です。そういった色んな意味を踏まえて、TOYOTAの豊田社長がおっしゃる「選択肢を持つ」というのはとても現実的な宣言であると、わたしもひとりの自動車業界のエンジニアとしてそう思います。さて、本題に戻りましょう。

EVで、東京は新宿を出発し、愛知県は長久手のトヨタ博物館を見学し、早めの夕食でピザを食べ、その日のうちに帰ってきました。

片道2回充電したので、仮に無給油で走りきれるディーゼルエンジンのクルマで休憩無しで走り切る時間と比べたら確かに時間にして1hくらいロスしてるんですが、急ぐ旅でもない場合、東京から名古屋に行く間に2回くらい充電を兼ねた休憩を挟んでもとくに違和感は感じなかったし、なんならEV専用急速充電器枠は、今回の旅では全ての場所で空いていたので、駐車場を探す手間がない特別感??みたいなのもを感じるくらい。ただ、基本的にはMAZDA MX-30 EV は普通充電を奨励している(バッテリー保護の観点から)ので、今回は少し無理をさせてしまったのですが、「充電時間がネック」と言われているほどのストレスは、今回の運用では感じなかったなというのが正直な感想です。しいて言えばドライバがー2人以上いて、いつでも交代できる状態だと、充電しなくていいならお手洗い済ませてすぐ出られるかなと思ったくらい。それくらいかな。それでも、あとで知ったけれど、急速充電も30分がデフォルトの設定だけれど、15分程度で切り上げる運用がイケてるという話を聞き、なるほどなと思いました。

35.5kWhのバッテリー容量(他のEVよりもかなり小さめの容量設定)のMX-30 EV でも、東京-名古屋くらいなら内燃機関の自動車とさほど変わらないフットワークで動けるな、という印象で帰ってきました。ただしこれも、スタート時点で電池容量が最大で80%でスタートせざるを得ない、都会での急速充電メインでの運用なので、おうちの車庫で100%満タン充電でスタートできたら、もっと快適かも知れないなと思っています。この話は、まとめの項で最後に次のステップとして話そうと思います。

余談ですが、トヨタ博物館は相変わらず流石の展示内容でした。最近のTOYOTAさんは、GRブランドでのレース活動を基軸とした「クルマを走らせる楽しさ」をど迫力で展示していて、時代の変化を感じました。やっぱり「運転はたのしい」という感覚は、どんなに技術が進歩しても、(モーター)スポーツとして存在している事実があるわけで、本質的には楽しいものなんですよね。

  

あと、これも次回じっくり話そうと思いますが、いわゆるオートクルーズ/車線逸脱サポートを総合的にやってくれる、 MRCC&CTS という機能があるんですが、これの考え方と動き方が凄い。なぜもっと騒がれないのか不思議なレベルで凄いです。簡単に言うと、

運転の仕方を、マツダの人が教えてくれる感じ

です。運転が好きな方の中にはこういった制御の介入が早め早めに入ってくるのを嫌う人もいますが、この MX-30 EV のMRCC&CTSは、電気駆動だからこそ更に緻密な制御が可能になったのだと推測しますが、まるで上手な人がハンドルに手を添えてくれてるような、加速のタイミングと塩梅を教えてくれるような感覚になります。とくにステアリングの切り始めが 手前から、ゆっくり、早めに、なんですけどこれが出来ると旋回中の車両の挙動が、…‥‥‥、やめましょう、今度にしましょう。笑 ぼくも含めて多くの人は、自分が思っているよりもステアリングを 切り遅れている ことが多いです。これを、一瞬ちょっとだけ クイッ って教えてくれるんですよ、MRCC&CTS。すごくいいと思うし、このあとこのお客さんは、「他のクルマのとも比べたけど、わたしはマツダの運転支援の感じが好きです。」って言ってました。”制御にファンがつく”なんてことが、あるんですね。。。本望では。。。MRCC&CTS

マツダは元々、コ・パイロット という考え方で運転支援システムの開発を進めてきましたが、もうすぐそこに一つの形が出来上がろうとしているんじゃないかと感じました。凄い。

”EVは音楽を満喫するための新しいデバイスかもしれない。”

お客様の中に音楽家の方がいます。何組かいるんですが、今回EVに乗りたいと手を上げたその人はプロの音楽家・ハープの演奏家で、コンサートや教室を開いていたりしています。(最近、HPを開設されました。ぜひハープの音色や気軽に楽しめるクラシック音楽の世界を覗いてみてください。)パートナーの方も「もう隠居!」と言いながらも、長くクラシックや吹奏楽の音楽プロデューサーや、ラジオパーソナリティーをされていた方、わたしにもいつも沢山の音楽のことを教えてくださる人です。クルマの練習にお伺いするたびにぼくは音楽のことに詳しくなって帰ってきます笑 今回のEV体験に、そんな彼が、MX-30 EV の後席に座って練習についてきてくれたので、せっかくなのでいろんな楽曲を聴いてもらいながら走りました。すると、その次の日の彼のFacebookに、

「電気自動車の後席で音楽を聴きながらのドライブはとても良かった・そもそも静かだし、贅沢な音楽鑑賞のための小部屋みたい」

と書いていました。MX-30は観音開きドアだからというのもあって、借り主のわたし自身が後席に座って誰かにドライブしてもらうことがなかったので、まさに目からウロコでした。その記事を読んだ夜にうまいこと後席に座ってBOSEのサウンドシステムでお気に入りの楽曲や、お仕事で収録にかかわらせている楽曲をかけてみたら、たしかにな…と…(下記の写真右の車両はBOSE非搭載車ですが、イメージです。)窓が大きくないことすら、いいんです。スタジオに居るみたいな、いらない情報が入ってこない安らぎみたいなのがあって、むしろ良いくらい。これは贔屓すぎますかね。笑

もちろん、わたしなりに何がそうさせているのかいくつか思い当たることはあります。たとえば、EVはPTからの音が少ない(エンジンやトランスミッションからの音が少ない)分、ロードノイズや風切り音など、外界からのノイズを遮断する必要があるので、比較的静かであること。確かに、フロアカーペットが見たことないくらい分厚くてびっくりしました。触り心地もフワフワで素敵。

もうひとつは、気のせいかも知れないけど”直流のバッテリーから電源を得ていること”なのかなと。

オーディオも、”沼”にハマると「家の外に専用の電柱を立てるところから」みたいな話がありますがあれは笑い話ではないらしく、むしろかなり本質と言うか結構早い段階から電流の揺れは重要な課題になってくるようです。少し話がそれますが、わたしは自分で動画の撮影や編集をする傍らこのクラシック音楽家さんたちの音源の収録やコンサートの収録をお仕事としてさせていただくことがあるのですが、確かに次は電源の質だなと感じています。いつもアドバイスをくれるシンガーソングライターもそんなことを言っていました。

思い出してみればエンジンもそうですね。アースがちゃんと取れてないと、点火が安定しないみたいな。自動車の世界でもよくある話ですよね。なので、従来型のオルタネータを持たないEVって、回生ブレーキ以外は電流が揺れる要素がないから、音が揺れなくていいのかな??なんて思ったり。これは計測したわけでも聴き比べたわけでもないからなんとも言えないけれど、あれだけ音楽を聴き込んできた人が、こちらが頼んだ訳でもないのにご自分ののFacebookに独り言のように書くくらいだから、素直にそう思ったんだと思います。本当にそうだとしたら、ちょっと嬉しいなと思います。EVが欲しくなっている今のぼくは、背中を押されてしまう。笑

Q.走らせて楽しいの? A. MX-30 EV はすごく楽しいです。

MX-30 EV は、競合他社のEVに比べると、かなり面白い成り立ちをしています。バッテリー容量は小さいし、エンジンモデルも併売しているからEV専用設計じゃないし、その結果なのか狙ってなのか、前後重量配分 55:45というスポーツカーみたいなパッケージで、その重心に限りなく近いところにドライバーがいる。そういったMAZDAのライトウェイトスポーツのセオリーを踏襲しておきながら、まさかの前輪駆動のSUVという、ちょっと未だかつてないエポックメイキングな成り立ちのクルマですよね。あ、しかも観音開きドアなんでした(個人的には観音開きドアが霞むくらい、物理的な成り立ちが面白すぎて)。

この記事の冒頭でお話したとおり、運転がおぼつかない人たちの最初の一手としても驚異的な素質の良さを持っていることは、なんとなくご理解いただけたと思いますが、じゃあ、上手になったひとに乗せたらどうなるのかも試してきました。

場所は、神奈川県の宮ヶ瀬ダム周辺。
https://goo.gl/maps/9k9dEHZ77JUQf3FSA

この人は、「2年かけて左ハンドルMTまで何でも乗れるようになった人」で、 「いろいろ乗れるようになったからどれも魅力的に見えてきて、逆にクルマを選べない。」と言っていて、月に一度か、数ヶ月に一度、「次、わたしは何乗ったらいいですか?」という、おしながきのない寿司屋に入ってくる常連客みたいな素敵な人です。だからこちらも面白そうなクルマを毎度真剣に準備するんですが、このMX-30 EVこそ、乗ってもらいたい一台でした。

この人は、ドライブそのものが楽しいと感じていて、クルマの違いを楽しむことも醍醐味だと感じている人です。実は以前にもMTの練習をすることになったときにはMAZDA2のP5のMTを、スポーツカーを体験する企画のときにはRFのMTを、別の企画のときにはNCロードスターRS 6MT をこの同じコースで体験しているので、この延長線上で MX-30 EV を、”楽しいかどうか” という視点で乗ってもらいたいとわたしは思っていて、とても注目していました。

で、峠道を何周か走って楽しんで出てきたコメントは、

「とっても自然ですね。ワクワクドキドキって言うよりも、自然に運転してる感じがよくわかる。加速も、ブレーキも、ハンドルも、わかるから、それが楽しい。」

って。え!もっと(コメント)ないの!!って思いましたけど、よく考えたら最高の一言だったのかも知れません。MX-30というクルマのコンセプト自体が、自然/自然体というこ言葉で構成されていて、まさにそれを体現しているのだとしたら、拍手喝采ものなのではないでしょうか。このクルマは、パワーを誇っているわけでもなく、贅沢を見せびらかすわけでもなく、この多様な世の中を肩の力を抜いて生きていくためのツールとしていかがでしょう?というメッセージとともに登場したわけで、確かにそれを実現しているのだとしたら。あと、一つ面白かったのは、

「こがさんが運転したら別物みたいに走るんですね。こういうクルマの時、いつもそれが悔しいんです。」

と言っていました。これは未だにどう解釈していいのかわからないんですが、ぼくがうんてんすると、ぼくがうんてんするように走るらしいです。(日本語としてどうなのか笑) つまり、乗り手の意図や実力を表現するポ余力?がありますねって言いたかったんだと思います。同じようなことが TOYOTA_MARK-X で練習したときにあって、そういうことだったのかなと思います。

多様であることと、その多様な人たちが自然にしていて成り立つ、というのは一見矛盾して見えるようなことですが、ここにきて、ダテにMXの名を関しているわけではないのだなと思えてきます。

ご存じない方に説明すると、昔、ユーノス・ロードスターというクルマがあって、それが今の MAZDA ROADSTER に繋がってるんですが、実は、海外では MX-5 という名前で販売されています。MX-5はオープンカーで、スポーツカー。だから、今回このMX-30というクルマが登場することになったと知った時、「なぜこのクルマにMXの名を??」と、不思議に思っていました。だけど、この2週間で色んな人といろんな、全く異なるカーライフの場において、振り返ってみればどこにいても 自然 なクルマだったなと思います。そして、初代 MX-5 のカタログある、少し有名な1フレーズを思い出します。

このクルマを手にするほんの少しの勇気を持てば、きっと、だれもが、しあわせになる。

という秀逸なフレーズあって、MX-30 EV も、こういうクルマなんだなと納得せざるを得ない。MX-5ほど多様性を受け入れたクルマは世界的にも数少ないと思うし、その歴史は今でも世界中脈々と続いている。紆余曲折あったはずのこのクルマにMXと名付けた人(たち)は、とても素敵なセンスをもってこのプロダクトを世に送り出したのだろうなと想像してしまう。ひとりで走らせても、誰かを迎えに行っても、荷物を乗せても、音楽を聴くにも、いい。自然だからとっつきやすくて、それでいて使い込めば使い込むほどいいところが見えてくるような、そして、走らせる楽しさもきっと奥行きの深い、きっとそういうクルマなんだろうなと、今ぼくはこのクルマに対して、みんなとの日々を経て、思っています。

こがの感想はどうなの?

5-6年ぶりに?新車で欲しいと本気で思うほど、いいなと思いました。

クルマとして決して軽くはないけれどEVとしうては十分軽い。モーターのトルクは0rpmから270Nmを発生、最高許容回転数は11000rpm 、前後重量配分55:45 で、なんと言っても、重心とほぼ同じ場所に運転席がある。これは、初代ロードスターやFD/FC_RX-7が、スポーツカーの資質として設計する最初の段階からとても大事にしていたことで、コーナーで旋回していくときの姿勢の変化が、物理的になるべくしてなる動きなのでとても気持がいい。

前輪駆動であることは乗る前まではネガティブに捉えていたけれど、FIATやルノーやシトロエンを知った今のぼくが乗ると、”前輪駆動の良さ”も見えてきて、むしろ一般向けに出すなら前輪駆動という選択は正解だと思う。あと、MX-30 EV の前輪駆動に関しては、既存のMAZDAのFFとはかなりちがう考え方で作ってるんじゃないかなと個人的には思っていて、今度聞いてみようと思っています。減速しながらのターンインはアルファロメオっぽくて、駆動力を掛けた状態で向きを変えられるのはルノーっぽくて、出口で直進に向かおうとする挙動はシトロエンぽい気がする。従来のMAZDAのFFではそうはならないよなっていう挙動で、すこし驚きを感じています。

こういうのは何がいいとか悪いとかいうのは好みの範疇になってきがちなのだけれど、前輪駆動でありながら、MAZDAの歴代の後輪駆動のスポーツカーをただ模擬するようなフェイクではなく、バランスよくトラクション掛けながら駆動力で旋回できる前輪駆動って、「新しいスポーツ性」を感じさせるもので、個人的には国産車としては新鮮で、走らせる楽しみが十分にあるクルマだと感じています(しいて言えばDC2インテグラタイプRの旋回特性に似たところがあります)。フロントのオーバーハングも、あり得ないほど軽いでしょう。スイスイ曲がっていけて、ビュンビュン加速する。ちょっとこれは、もっと評価されていいと思います。余談ですが、こういうのはあまり話さないほうがいいのかも知れませんが、アウトランダーPHEVの開発に関わった人と話す機会があった時に、MX-30 EV の走行性能を絶賛していました。「2WDでここまで出来るのは、制御もいいけれど、根本的なパッケージが他には真似できないだろう。」と言っていました。わたしもそう思っていたので、アウトランダーPHEVのファンでもあるわたしとしては、嬉しい答え合わせでした。

もしも叶うことなら、いちど、小さなサーキットで走らせてみたい。タイヤを無駄に減らすような走りでなく、きちんとセオリー通りに目一杯タイヤを使って走らせたら、どんな走りをするだろう?と期待してしまう。或いはぼくでなくても誰か、サーキットでライバルEVと対決してみてほしい。タイムはそこそこだったとしても、走らせたドライバーは、MX−30 EV を、いい!って言うと思う。加速力が物足りないっていうコメントもちらほら見るけれど、パドルスイッチの右側で駆動力の出方を選ぶことが出来ます。2回押すと加速力と立ち上がり方が最大になる(計測はしてなくて体感で書いてます)んですが、その状態でスバっとアクセルを踏み込めば、大抵の速度域から0.3-4Gくらいは一瞬で取り出せるので、十分じゃないかと思います。(これくらいがノーマルでいい。出そうと思えばもっと強烈に出せるはずですし。)80km/hからの加速なんて、ガソリン車には真似できないと思うし、実際の交通流をリードして走るには十分な余裕駆動力と、内燃機関では実現し得ないレスポンスの速さつまり瞬発力を持っていると思います。MX-30 EVは、そんな、走って楽しいとか、爽快だとか、そういう性能も踏まえた上で、色んな人のいろんな生活の中に溶け込んでいく、という、

概念としての、「潜在的なマーケットを創出する、初代ロードスターのようなクルマ」

だとわたしは思いました。MX-5の後継者としてのMX-30 EV なのかと。MX-5にも、そういうところあるから。

まとめ

電池容量が小さいとか、まだまだ充電インフラが整わないとか、世の中はいろいろいいますけど、そもそも、200V電源で自宅や職場の駐車場で常時充電していてほしいというのが自動車の作り手としての願いというか、一つの最適な運用方法なはずで、それがない状況下で便利とか便利じゃないとか議論してもあまり意味がないと思うし、そもそも、急速充電器では基本的にバッテリー容量の80%までしか充電できないので、そのクルマの実力の80%までしか充電できない。そのような状況下で評価していて、あーだこーだいうのはちょっと違うと思うので、

三重県の実家に200V電源を設置する工事をすることに決めました。今回は都内での急速充電器メインでの運用でしたが、次は、地方におけるおうち充電前提でのEVの本気を試してみたいと思います。

走行性能やアクセサリー類や使い勝手やデザインや諸々細かくマニアックな話は次回、地方EVライフ編でお送りします。お楽しみに!

MX-30 EV は、ペーパードライバーの練習から、音楽家のドライブから、長距弾丸旅行、峠ドライブまで、みんな、しあわせそうでした。興味を持って、勇気を出して、未来のクルマのハンドルを握った人たちが、確かに満足出来るクルマって、多少の面倒とか苦手なこととか細かいことを、吹き飛ばしてしまう。

最後に、この MX-30 EV の最大の魅力であり、凄いとろこは、EVでありながら既存のガソリンエンジンのクルマから乗り換えても、何ら迷うことなく使えること。ボタンやレバーの配置すら迷わなくていい。このことは賛否両論あるけれど、個人的にはこれがいいと思う。そして、これでで十分だと思う。十分にいいとこ取りの、絶妙なスペックだと思います。

もちろん、他をDisるつもりはなく、確固たる独自の立ち位置を持っていて素敵だという話。自動車を作り続けて100年もたった今、パワーソース(動力源)が変わったことで、安全性や快適性を研究し尽くしてきた人たちがやるべきことって、そんなにドラスティックに変わらないと思うのが自然かなと自動車メーカー出身のわたしは思っています。もちろん、1000馬力とか、0-100m:2秒台とか魅力的だけど、2・3回使ったら飽きると思うし、そんなの試す場所は地球上にそう多くない。

とかなんとか、更に詳しい話や実際にぼくが使ってみて思うことなどは、このクルマが本領を発揮する自宅駐車場に200V電源を用意した上で、地方でのEV生活編でご紹介していきたいと思います。

混沌としつつもいろんなクルマが出てくる大転換時代、苦しくもいい時代を我々は生きているのかもかも知れませんね。1989年前後の、”あの頃”のような。

自動車開発テストドライバー
古賀章成

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