電気自動車・EVと暮らしてみよう ①【MAZDA MX-30】

3日で脱ペーパードライバー

クルマの未来がどうやら大きく変わるらしい。

こんにちは、古賀章成です、自動車開発テストドライバーという仕事をしています。クルマの未来が、どうやら大きく変わるらしいです。

昨今、急速に、「20〇〇年以降、クルマは電気で走らせます!」と、国や地域、自動車メーカーが宣言するようになりました。個人的には、誤解を恐れず言えばどっちでもいいと思っているのですが、

  • 本当にそんなことできるの?
  • 電気足りるの?
  • 充電って間に合うの?(時間的にも、設備的にも、などなど)
  • バッテリーってめちゃくちゃ重いけど、クルマと道路は大丈夫なん???

など、パッと思いつく限りこれくらいのことはぼくでも思い浮かびます。じゃあ、頭の中ですぐダメだろって決めつけるのは簡単なんですが、自動車メーカーが次々と未来に向かってEVを出している。ということは、あながちダメでもないのかもしれないし、やるからには新しい魅力を付加していかないと市場は動かない(既存のものより魅力的でないと、買ってもらえない)だろうから、何かEVならではの魅力を見せつけるようなことをやってくるだろう。と、自動車メーカー出身のぼくの脳みそはそんなふうに考えます。

「現時点でEVに乗るには色んなハードルがある」

そんな話題急上昇なEVですが、案外普及していない。日産リーフテスラくらいかな?トヨタは2022年にやっと戦略を発表するくらいの慎重さだ。つまり、「現時点でEVに乗るには色んなハードルがある」ということでしょう。よし、

では、ぼくが自分で電気自動車(EV)を借りて生活してみて、実際のところをぼくが試して、EVへの未来がよくわかんないよっていう人たちの参考になるような

  • つまずきポイントの洗い出し
  • EVならではの新しいカーライフ像

を、お伝えしていきたいと思います。車両は、マツダ株式会社様から MAZDA MX-30 EV 広報車をお借りしました。

都会なら24h営業の速充電器がコンビニと同じくらいの数があるのでさいあく家に充電設備がなくてもいいですが、ちょっと地方都市になればそうはいきません。EVSmartというWebサイト/アプリでEV用の充電器の場所や仕様や営業時間を検索することができます。今回の検証の拠点とする三重県松阪市周辺と、いつも私が一緒に仕事をしているピッコロカーズさんのある東京都江戸川区を中心として、同じ縮尺で見た時の充電器の数をご覧ください。

地方都市になると、急速充電器にたどり着くまでに距離があって、数も少ないから並ばないと充電できないこともあります。こういった事情は、経済活動の中心である政令指定都市くらい大きな都市に住んでいると見えてこない。人口の半分以上は地方に住んでいる。だから、「家で充電する」という運用を確立しないことには、EV社会はやってこないといっても過言ではないと思っています。しかしながら、ここを丁寧に解説できる人は、この世にほとんどいないこともわかってきました。

わかりました、では、ぼくがやりましょう。

三重県松阪市の実家にEV用200Vコンセントの設置工事をして、電気利用料の推移も確認できる状態にして、MX-30 EV を迎え入れました。ここから、家のガレージで毎晩充電ができて、毎朝常にバッテリー100%の状態から運用した時に、

  • それでもEVは世間が言うほど不便なのか?
  • 電気が車内で潤沢に(しかもエンジンをかけずに)使えるメリットってあるよね?

と言うのを、素朴に書き綴っていこうと思います。

正直、SDGsがどうのって、

正直、SDGsがどうのって、その宣言の中身をつぶさに見れば見るほどある意味当たり前と言えば当たり前のことで、本当にその選択肢としてEVがふさわしいならば適切に進化していってほしい。慣れ親しんだエンジンというものに対する愛着や執着は理解しなくもないけれど、100年前の人類は、馬や馬車やカゴに乗っていたわけで。パワーソースが(動力源)何であれ、

  • より遠くへ、
  • もっと快適に、

という人類の欲求は、テクノロジー(科学技術の力)を持ってして発展してきたわけで、たまたま今、また新しい局面の一つに向き合ってるにすぎない、という気がしています。

ハードルは、ないといえばウソになる。

ないと言えばウソになるけれど、高さが見えているハードルなら越えればいいだけのこと。超えた先に素敵な未来が待っているのなら、超えたくなるものだろうし、超え方を知っている人は、まだ知らない人たちに親切に教えてあげればいい。

ただ、やってみてわかったことは、

自動車メーカー出身で且つ電力の仕事をする家族を持つぼくがやってもややこしいと感じたし、一筋縄ではいかなかった。設備の導入を決めてから1ヶ月半はかかったし、電力の契約の見直しも必要だった。更なる見直しの必要性も感じている。それも、電力会社(今回は中部電力ミライズさん、TOENECさんにお願いしました。)の、その中でもよっぽど詳しい人と出会えて初めて、起案してから2ヶ月目、クルマを借りてきてから4日目の朝、初めて、

自動タイマー充電で寝てる間に充電→満タン

と言う、理想的な朝を迎えることができました。

これから、およそ10回くらいにわけて、EVと暮らす上でのいいことや困ったことやもっとこうだったらいいのに、を、テーマごとに分けて連載していきたいと思います。

結論から言うと、

環境さえ整って仕舞えば、EV(いや、まずはMAZDA MX-30 EV と言うべきか)は、これからの時代にマッチした、とてもいいクルマだと思っています。走行性能も申し分ない。個人的には既存の国産車の中では値段に見合うだけの上質さを持っていると思う。前輪駆動にしてはヘンテコな重量配分ですがそれが生み出すプレジャーがある気がする。このユニークさは無視できなくて、そこらへんのスポーツカーと比べても、ドライブしていて楽しいと感じます。もちろん、「欲を言えば、」っていうのはいくらでも出てきますけどどんなクルマだってそれはあるし、そんなのチューニングの範疇でなんとでもなる。端的に言って、素性が本当に素晴らしいと思います。

MX-○○という名を冠する意味

ちょっと脱線します。これはEV一般論というよりも、MX-30というクルマの話(ガソリンエンジン仕様や、まだ見ぬロータリー・レンジエクステンダーも含む)なんですが、MAZDAがMX-何某 とつけるのは、実はMX-5:ロードスターだけなんです。RXはロータリーのR、CXはクロスオーバーのC、MXは何のMだったか忘れましたが、”独創的な”とか、”開拓者”とか、そういう意味が託されていたはずです。最初、こんなずんぐりしたSUVだか何だかわかんないクルマに、なんで”MX”と名付けるのかなと不思議でしたが、このクルマは紛れもなく、かつてのMX-5:ロードスターがやったことと同じ、”市場のないところに自分達が考え抜いた新しい未来”を、ぶちこむ、という、紛れもないMX-30なのだと、一週間乗っててそう思うようになりました。

次回以降で詳しく話しますが、このクルマは世界に類を見ない構造を持ったクルマで、エンジンとレンジエクステンダーとバッテリーEVを一台でこなす前提で作られているクルマなんて、他にあったかな?多分、ないと思います。EV専用車として生まれてきたら、いかにラクだっただろう。けど、その無理難題をクリアしてきたからこその、魅力的なアンバランスがそこにある。

既存のエンジンのクルマから乗り換えても違和感がないことの価値 

MX-30 EVは、頼まれてもいないのにそういう感じに仕上がっています。これは素直に、「ユーザーに優しい」と思います。今の人たち、これからの人たちは、クルマを買うのではなくて、”借りて乗る”のが主流になるでしょう。そうした人たちに安全に乗ってもらおうと思ったら、極端なインターフェースの変更や、動力性能の変更って迷いや不安の原因になってしまう。他からローテクだとか先進性や新鮮味がないとかバカにされたとしても、このスタンスは是非キープしてもらいたい。だって、これから免許を取る人たちが乗る教習車が、いきなりぜんぶエンタメ満載ハイテクEVになったりしないでしょうし。(そのへんは、どうなるんでしょうね。)

走行距離あたりの料金は、電力はガソリンのおよそ”半額”

これも次回以降の連載で詳しく解説しますが、ざっくり乱暴に言って、同じ距離走って、エアコンもオーディオも同じように使って、家で充電した時の電力料金と、ガソリン代(15-20km/Lは走るコンパクトカー)を比べて、乱暴に計算しても、電力の方がおよそ半額くらいです。これはびっくりしました。

さらにいうと、今の季節、花粉が減ってきて外気温も快適な春先、エアコンOFFで高速道路を巡航したら、もっと伸びる。

35.5kWhのバッテリーは小さいのか?
浜松→松阪 190km 走破したのは十分だと思う件

エアコンOFFの丁寧運転なら、190kmを無給電で走行できる。十分かな。

第一回目の締めくくりとして、多くの人が気になっているであろう、バッテリーが小さいEVだと遠出が不安だと感じる件なのですが、エアコンOFFとはいえ、静岡県浜松市から三重県松阪市までのおよそ190kmを、バッテリー残量10%残しで走破したのは、とても偉いと思う。あとは到着した先(自宅)で充電器に差しておけば、休んでいる間に満タンへ。ガソリンスタンドへ行く必要すらない。この快適さには感動しました。

課題はなんだ??

課題というのは伸び代で、それを否定する理由にはならないというのは、大学で研究したことのある人か、仕事で開発をやったことのある人か、経営者か、そういうタイプの人の考え方かもしれませんが、課題はチャンスであり、課題はそれを諦める理由ににはならない。ただここは、意見が分かれるところ。課題が見えた瞬間に買う気が失せるというのが、マーケットの98%だろうということも、ぼくは知っているつもり。じゃあ、今のEVにある課題って何かって言うと、わざと書き出しますけど、

  • 家に充電設備を設置するための手続きが難解
  • 家に充電設備を設置するための工事がオーダーメイドなので汎用的な説明が難しい
  • 家の電気設備にEVの充電を追加した時、使用する電力の総量(総電流と言うべきか)を把握するのが難しい
  • 生活に使う電力にEVの充電を追加したときに必要なブレーカーの設定が難しい
    →実情、家庭用のブレーカーでは4人家族だと上限50Aにしたとしても心もとない
    →充電コントローラーの必要性や、EV充電を前提とした、電力会社側のサービス変更・充実が不可欠

この辺りが重要なポイントになってくるかと思います。

EVはいいぞ。

さて、連載をスタートしていきますが、先に言っておきます。EVはいいですよ。

夜中や早朝に出かけようと思ったとして、ガレージや駐車場からクルマを出すのに、ほとんど音が出ないから気兼ねなく出入りできる。EVの多くは元々遮音性が高いのと電源が直流だから、オーディオ環境としてとても心地よい。エンジンかけてなくてもエアコンもONにできるから、リモートワークや第3の居場所としてもいいし、ぼくみたいに仕事用の機材を常に充電しておきたい人間にとっては、安定して潤沢な、文字通り”走るバッテリー”は、最高に心強い仕事とアソビの味方になる。

このGWには、三重の海沿いの展望台に、天体観測に行ってみようと思っています。静かに、生き生きと。

自動車開発テストドライバー
古賀章成
kogatounten.com

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